【東京都足立区】母の愛で園児をあたたかく守る金杉園長、先生たちにとっては第2の母
認定こども園 杉の子幼稚園
- 東京都足立区
- お母さん先生も多数
- 卒園生とのつながり
- それぞれの適正に合った役割
- 認定こども園

金杉紀美子園長
園長 金杉紀美子
ご主人は、歯学博士。結婚を機に、義父母が営む私立幼稚園で働くことを決めた。第1子を授かったばかりで、お手伝い程度と思っていたが、園長だった義父から園経営を引き継いだ後、幼稚園経営の大幅な改革が必要だと感じた。副園長の立場となり、経営・財務・教職員育成など、4人の子を育てながら約15年かけて変えていった。義父の後、園長となった義母から「園長になってほしい」と頼まれ、創立50周年に合わせて杉の子幼稚園 園長に就任。「もちろん不安もあったが、たくさんの子ども達の笑顔が私を支えてくれた。」と話す金杉園長。園改革は今も続き、大きな愛と優しさで周りを包み込んでいく。子育てが一段落した頃から、始めたジム通い。「多くの卒園生がいつでも帰れる港でありたい」と、運動や食事を重視し、健康維持を大切にしている。
目次
伝説の忍者になりたくて
卒園生に渡す 宛先だけのはがき
「杉の子幼稚園に 入れてくれてありがとう」
〇〇のプロ先生!
お手本は先輩の保育
命よりも大切なもの
伝説の忍者になりたくて・・・・
「皆すごく上手!でも、まだ足りないものが1つあります。“みんなの心を一つにすること”。じゃあ、心を一つにするために必要なことって、何かわかるかな~?」
運動会で発表する鼓笛隊のリハーサルを見た金杉園長は、子どもたちに問いかける。
「協力すること」
「周りを見ること」
などと、答える園児たち。金杉園長は続ける。

練習に取り組む園児たち
「そうだね。それも大事!“心を一つにする”には、自分ひとりが頑張ればいいんじゃないの。仲間の音を聞いて!」
「はい!」と、ハツラツとした返事をする子ども達は、練習を続ける。そんな園児の姿に金杉園長は笑みを浮かべた。
杉の子幼稚園の運動会は、『運動会』と呼ばない。毎年、運動会のプロジェクトチームが組まれ、先生たちがテーマを決める。2025年のテーマは“忍者”。運動会は『忍者フェス』と名前を変え、子どもたちは“伝説の忍者”になるために、“修行”をする。

廊下に掲示してある、忍者から届く手紙
運動会の練習期間中、杉の子幼稚園には、忍者からの手紙が届く。「すぎのこようちえんの みんなへ」と始まる手紙には、「あいさつ」や「整理整頓」など、日常“修行”を頑張る子どもたちへのメッセージが書かれている。
金杉園長は、「まだ運動会を経験したことのない新入園児が、同じ練習を重ねる意味を理解することは難しい」と言う。だからこそ、やる気を引き出す工夫をしているのだ。
この手紙には、巻き物を思わせるような岩肌模様の用紙を使用したり、掲示物には、忍者を連想させる紫色の布を貼ったりと、こだわりが凄い。先生たちの魔法にかかり、どんどん「忍者の世界観」に引き込まれていく。

シャボン玉で遊ぶ子どもたち
その理由を問うと、「子ども達は素直で純粋だから、より本物に近いものを用意すると、心から信じます。忍者に扮した先生も出てくると、夢中になって話に耳を傾けますよ。だって、つまらなかったら聞かないでしょ」と笑っていた。
卒園生に渡す 宛先だけの葉書
「6年後、皆さんが小学校を卒業する頃、この葉書に書いて幼稚園に送ってください」
そう言って、 巣立っていく卒園児一人ひとりに幼稚園宛ての葉書を渡す。

卒園式の様子
「あまり返ってくることは無いんですけどね」と、苦笑いの金杉園長から、葉書がつないだ命の話を聞いた。
ある日、1枚の葉書が園に届いた。毎年、卒園児に配るあの葉書だった。差出人には、懐かしい名前。その子は既に小学校を卒業し、中学1年生になっているはず・・・・
「僕は、学校が嫌いです。友だちも嫌い。親も怖い。死にたい・・・・」
その子の文字は、叫んでいた。「助けて・・・」
金杉園長は、すぐに保護者や就学した小学校へ連絡。小学校から進学した中学校へ連絡してもらった。
金杉園長は、当時を振り返ってこう語る。
「幼稚園時代は、勉強や競争も無く楽しいことばかりだから、辛いときや心が弱ってしまったときに思い出す場所なんだと思います。『あの頃は楽しかったなぁ・・・』って。私は子ども達の“心の故郷”になりたいと、いつも思うんです。」

園で過ごした日々は、楽しい思い出として子どもたちの記憶に残る
今でも、学校の帰り道にふらっと幼稚園に立ち寄る卒園児がいると教えてくれた金杉園長。
「私ね、100歳まで園長を続けるんです。いつ誰が園に帰ってきても『おかえりなさい』と言えるように、ココにいないといけないから・・・」
「杉の子幼稚園に 入れてくれてありがとう」
5年前、世界中を震撼させた新型コロナウイルス。その脅威の中でも、杉の子幼稚園は、前進し続けた。
「コロナ渦で、先生たちは腕をあげましたね」と話す金杉園長見せてくれたのは、子どもたちの作品をコラージュしたおたより。

担任の先生が作成したおたより
コロナが流行し始めた2020年。4月に行うはずだった入園式も延期。緊急事態宣言が発令され、園舎から子どもたちの笑い声が消えた中、杉の子幼稚園の先生たちは、保育動画を作成し、毎日のように送信していた。
いつか戻ってくる日常を待つのではなく、WEB保育(動画配信・ズーム保育)を繰り返していたのだ。
会えない時間が続いても、クラスの絆が深まった日々。そして6月、初めて全園児がそろった日。泣きながら登園する子は一人もいなかった。

子どもたちを迎えた先生たち
子どもたちにとって、杉の子幼稚園はよく知っている見慣れた場所になっていたのだ。登園1日目で、「〇〇先生!」と呼ぶ子もいたという。

子どもたちは笑顔で入園式を迎えた
先生方の写真・動画編集のスキルは健在。入園説明会の開始時に流れる動画は、園の歴史を感じられ、子どもたちの輝く笑顔が印象的で思わず前のめりになってしまう。運動会の親子競技の説明動画は、先生たちのデモンストレーション付き。保護者も迷わず楽しむことができる。
そしてその真髄ともいえるのが、卒園式の最後に上映される動画である。
卒園児退場後、保護者と教職員が残る式場で流されるのは、園児一人ひとりの入園時のあどけない写真と、その子が親に向けたメッセージ―
「いつも 手をつないでくれて ありがとう」
「おいしいお弁当を作ってくれて ありがとう」
そして、「杉の子幼稚園に入れてくれて ありがとう」

満面の笑みで遊ぶ子どもたち
「毎年、何人かそう書いてくれる園児がいるんですよ」と、はにかむ園長の表情の中に、心からの喜びと園の誇りを垣間見た。
〇〇のプロ先生!
杉の子幼稚園には、趣味や得意な事を活かして「もはや本職??」と思うようなクオリティをたたきだす先生方が大勢いる。
まずは、正真正銘の保育のプロ。

杉の子幼稚園には様々なプロの先生がいる
園の子どもたちの中には、「集団が苦手な子」・「とてもマイペースな子」・「上手く話せない子」など、特性を持った子がいる。中には療育機関に通いながら、通園している子も。そんな子どもたちも、運動会など行事の時、みんなと同じ衣装を着てダンスをしたり、列に並んで順番を待ったりする時間がある。

みんなで並んで、ハイチーズ!
でも、杉の子幼稚園なら大丈夫。ここで登場するのが、子どもたちの心に寄り添うプロである。「あの先生は本当に言葉がけが上手。練習をみていても、他の子との差が分からないんですよ」と、金杉園長のお墨付き。
杉の子幼稚園には、就職後、通信大学に通い心理士の資格を取得した先生が2人いる。現在、通っている先生も1人。次のプロが育っている。
資格取得は心理士にとどまらず、大型運転免許・中型運転免許を取得している先生もいる。幼稚園バスも運転することができるので、「既存の運転手さんに何かあっても安心」と笑う金杉園長。

笑顔引き出しのプロも!?
「人生なにがあるか分からない。旦那さんの転勤でここで働き続けることができなくなる日が来るかもしれない。そんな時、幼稚園教諭や保育士の免許だけじゃなくて、他のこともできるようになっておいた方がいい」と教えてくれた。(働く女性の先輩としての教えである)
続いて出会ったのは服飾のプロ。

服飾のプロが作った衣装を身にまとった園児たち
杉の子幼稚園では、毎年2月の発表会で、ミュージカルやダンスを披露する。その衣装のクオリティの高さに驚いた。ワンピースの内側には、可愛いレースがついたベーススカート。ライオンキングのラフィキには隠れミッキーと、「見えないところにも こだわっているんです~」と、待ち針を指しながら楽しそうに話す先生。クローゼットを開くと、そこには金杉園長が買いそろえた布が陳列されていた。

衣装づくりのための布が陳列されたクローゼット
先生たちの「得意」が輝く杉の子幼稚園。なぜ、適材適所の環境が叶うのか聞いてみた。金杉園長は「先生たちが教えてくれるんです」とにっこり。
先生たちが、素のままにコミュニケーションがとれるよう、月1回、学年・担当毎(3~8名)の食事会を推奨しているという金杉園長。

食事を楽しむ先生たち。仲の良さが窺える
もちろん強制ではないのだが、先生たちから好評のようで、“先生”という立場を超えた大人の女子会らしい。それぞれのパーソナリティに触れるコミュニケーションをとることで、結果的に「らしさ」を活かすことができるのである。
職員室では、「次はどこのお店にする?」「ここは、お勧め!」など、楽しそうな会話が飛び交っているそうだ。
お手本は先輩の保育
園内研修は、園の職員が自主的に行う学びの場。杉の子幼稚園でも学期毎に2~3回行い、忙しい現場の中で、一度立ち止まり、自らの保育を振り返る貴重な学びの時間だ。学年別にテーマと目標を設定し、お互いに保育スキルを高めている。
「新人の先生は、先輩方に見守られての保育はとても緊張するだろうけど、自分で立案・実践するからこそ、上手くいかなかった課題を自ら振り返り、先輩の保育(声のかけ方・導入の仕方・作業手順)を肌で感じ、小さな事まで吸収できる絶好のチャンス。反省会は、前向きなやりとりで溢れ、園全体が学びを深めていく」と、その効果を語る。

園児とブドウ狩りをして笑顔の先生
また金杉園長が考える研修のねらいは、これだけではない。「担任には『あなただけのクラスじゃない(あなただけの責任じゃない)。園みんなで子どもたちを見ているから、大丈夫。』と、伝えることを大切にしている。クラスの集団保育で『頑張り屋のしっかりさん』だけど、少し離れた場所だと、『とーっても甘えん坊』と、同じお子さんでも角度を変えると別の部分が見えてくる。そういう子どもたちの特徴(多面性)を知ってもらう場でもある」と説明してくれた。

園児の特性(多面性)は先生みんなで見守り、共有する
そんな先生たちを「笑顔にするのが私の仕事」という金杉園長。
先生方の笑顔は子どもの笑顔となり、子どもの笑顔は保護者の笑顔になると考えている。だから、金杉園長は先生たちの自分磨きを忘れない。

子どもたちとポーズをとる先生
「先生たちの幸せな人生のためには、必要なこと」と言い、「その手段は仕事のプロになることだ」と続ける。「趣味や好きな事で自分を磨くことは、もちろんいい事。だけど、人に評価してもらうという観点では難しいと思う。仕事は頑張れば、人に評価してもらうことができるのだから、先生たちには頑張りなさい・プロの幼稚園教諭になりなさい・保育の質を極めなさいと言うんです」
命よりも大切なもの
『お子さんを出産されてから、仕事に対する考えに変化はありましたか?』
金杉園長は、ひと呼吸おいてから語り始めた。
初めて我が子を腕に抱いたとき、こんなにも愛おしく自分の命よりも大切に思えるものがあるんだということを知りました。それと同時に、園では大切な命をたくさん預かっていることに気づかされました。

テルテルぼうずを飾る園児たち
「幼稚園の仕事(命の現場)を恐ろしく感じた瞬間でした」
金杉園長の愛情深さの理由が、“母性”であると感じた。そして、園や先生、子どもたちを守ろうと想う強さの根底には、“母の強さ”があることを知った。

園児から贈り物をもらう金杉園長
そんな園長が営む幼稚園には、子育てをしながら仕事をする先生たちがたくさんいる。中には、子育て真っ只中の担任も。もちろん、出勤時間は通常よりも遅く、急に欠勤することもある。そんな時、「いいよ。いいよ。」と快く返事をしてくれる先生たちのサポ―トが杉の子幼稚園にはあるのだ。
先生たちの第2の母のような、温かくて大きな存在でもある金杉園長は、「先生たちにいろいろな経験をしてほしい」と話す。その言葉通り、毎年恒例の親睦会では、若手の先生を親睦会幹事として、先生たちの希望を叶えるようにしていると言う。

親睦会では人力車に乗ることも!?
屋形船や人力車・・・先生たちの「やりたい」を叶えた結果・・・「あれは大赤字ですよ」と、天を仰ぐ金杉園長だが、「そこはお金をかけるべき」と笑うのだった。また、他園を見る機会も大切にしている。北海道から宮古島まで、全国の幼稚園や保育園、中国やイタリアなど海外の幼稚園にも行くこともある。

大きなタケノコを担ぐ園児。これも、経験の一つ?
「杉の子幼稚園では、子どもたちに多くの経験をさせている。それを促す先生たちにも、心からワクワクする楽しい経験を積んでいってほしいのです」。そう語る金杉園長の表情は、母としての責任と優しさをにじませた笑顔だった。