【福島県郡山市】誰とでも友達になれる人に―願い笑う阿部理事長。“おいしい”と園の“雰囲気”は良さが伝わりやすいモノ
学校法人小原田学園 こはらだ幼稚園
- おすすめグルメ
- 福島県郡山市
- 子どもがいるから先生になれる
- 特徴のある園舎
- 動物との触れ合い
- 認定こども園
- 挨拶

阿部光浩理事長
理事長 阿部光浩
1965年5月23日生。こはらだ幼稚園の5代目理事長を務める阿部先生。歴代の園長や理事長の肖像画が、ずらっと並ぶ部屋の天井付近を見て「こんな園はないですよ」と、その多さを笑う。これが、地域で作った幼稚園ならではの特徴である。プライベートは、飼っている2匹の柴犬を中心に時間が回っているそう。阿部理事長のつけた名前は「阿部ヨメ」(メス)と「阿部ダン吉」(オス)。ちなみに「ダン吉」はもともと「ダンナ」という名前だったが、ペットショップでその名前のややこしさを痛感し、改名した。店員は阿部理事長のことも「旦那さま」と呼ぶためである。強面(?)ではあるが、ユーモアにあふれる阿部理事長である。

阿部理事長の愛犬
目次
誰とでも友達になれる子ども
食べ物のおいしさと、雰囲気の良さはすぐに伝わる
私だけでつくる園じゃない
園児、「帰りたくない!」ってよ
“先生”になるために必要なもの
誰とでも友達になれる子ども
互助共生:互いに助け合い、共に生きていくこと
この言葉は、こはらだ幼稚園が掲げる建学の精神である。

お散歩の練習をする園児たち
「園児には、誰とでも友達になれるような人に育ってほしい」と願うのは、同園の理事長、阿部先生だ。“友達”の定義は人によって異なるが、記事中の基準には、阿部理事長の“友達定義”を使用させていただく。
「一緒に遊ぶ人だけでなく、何かを教えてくれるような人も友達と呼んでいる」という阿部理事長。“仕事相手”などと、誇張した一線を引かないことが特徴である。
誰とでも友達になる第一歩は“明るい挨拶”だ。「笑顔で『おはよう!』と言えない人と友達になりたいと思いますか?」という阿部理事長からの問い。答えは明白だ。だから阿部理事長は毎朝の登園時間、自ら門の前に立って子どもたちに「おはよう!」と声をかける。返事が返ってこなければ、もう一度「おはよう!」。それでも返ってこなければ、もう一度「おはよう!」。それでも……。

園庭で遊ぶ先生と園児
「挨拶をしない子どもには、しつこいくらい『おはよう!』と言っています」と、笑っていた。
阿部理事長が挨拶の返事を待っている相手は、子どもたちだけではない。もう一人の相手は、子どもたちの行動の手本となる保護者。「保護者が挨拶できなければ、子どもも『おはよう!』と言えるようにはならないから」と、その意図を語る。
しかし、幼少期には悪さばかりしていたという阿部理事長。運動会では、一人だけ競技に参加せず、園庭のはじで遊んでいたという。決して社交的とはいえない子どもだった阿部理事長が、「誰とでも友達になること」を園児に願う理由を聞いてみた。

動物ともお友達の園児
「園児が誰かと友達になりたいと思ったときに必要な“明るさ”や“挨拶”を身に着けてほしいと思う。私も大人になってから、そのようにして関係を築き、教えてもらったことがたくさんある」(阿部理事長)
子どもたちといつか出会う誰かとの間に、必要のない壁を作らないよう、阿部理事長は今日もにっこり笑顔と共に言う。
「おはよう!」
園児、「帰りたくない!」ってよ
「園全体が楽しめる園舎になっている」。そんな阿部理事長の言葉を裏付けるようなエピソードを紹介しよう。

園舎内にある遊具。子どもたちはネットの隙間から「先生!」と呼ぶ
こはらだ幼稚園にはコミュニティールームと呼ばれるスペースがある。
コミュニティールームとは、仕切りのある部屋ではなく、中庭と保育室の間にある、広い廊下のようなスペースだ。机やいすが置かれており、コーヒーなどを買うことができるカップ式自動販売機も完備。中庭側の壁はガラス張りになっていて、晴れた日の午後には温かい日の光が入り、日向ぼっこに最適だろうと想像する。

壁にブロックをつけて遊ぶことができる遊具
ある日のお迎えの時間、園児が駄々をこねている声が聞こえた。
阿部理事長が様子を見に行くと、園児は「まだ帰りたくない!」と泣いていた。「そうかそうか、帰りたくないのか」と阿部理事長は優しくなだめようとする。
そのやり取りを聞いた園児の父親は懇願するように園長に頼む。「先生!どうにかしてくださいよ…。もう迎えにきてから30分も経っているんです。しかも、1週間、毎日!」。しかしその表情は、園に対する安心感をにじませた笑顔だった。

阿部先生の特等席から見える、絵本を読むことができるスペース
「楽しすぎて帰りたくない」という園児のワガママは、何よりもの賞賛であろう。
そんな園舎には“理事長室”がない。阿部理事長の希望で、作らなかったそうなのだが、その理由は「寂しがりやだからさ、1人でいてもしかたないじゃん」とのこと。
園舎入口付近にある、ガラス張りの部屋で作業していることが多く、たまに園児が手を振ってくれる。遊ぶ園児、働く先生が見える、寂しがりやの阿部理事長にとって、この上ない特等席である。
食べ物のおいしさと、雰囲気の良さはすぐに伝わる
阿部理事長には、“行きつけ”のラーメン屋がある。こはらだ幼稚園から車で約5分、徒歩で10分程度の場所にある「春こま食堂」。店内の壁に掲示されているメニューの先頭には黒字でラーメン、赤字で800、また黒字で円と並ぶ。チャーシューメン、タンメンと続き、塩味とみそ味のラーメンがそれぞれ4種ずつ。最後の列には青字で“冷やし中華(夏季限定)”とあり、締めくくられる。

ラーメン屋「春こま食堂」の外観。店前には開店前から行列ができる
こはらだ幼稚園にお客さんが来た時には、必ずと言っていいほどこのラーメン屋を紹介し、ご馳走するという阿部理事長。「おいしいものは、皆さんにも食べてほしい。皆、おいしいものは食べたいでしょう?」といい、にやりと笑う。

ラーメン屋「春こま食堂」昼どきの厨房
「初心者はスタンダードな“ラーメン”からぜひ」と、タオルを頭に巻いた職人のように語る阿部理事長。「食べ物の“おいしさ”はわかりやすい。だからこそ、おいしいものを、充分な量ご馳走したい」という。

春こま食堂の店主
その食べ物の“おいしさ”に匹敵するほど、良し悪しがわかりやすいものに“雰囲気”がある。

春こまのチャーシューメン。透き通ったスープが美しい
こはらだ幼稚園の雰囲気を作る先生たちには、園児と同様、明るい挨拶を求めているという。阿部理事長は、「この幼稚園、おもしろそう!」と思ってもらえるような雰囲気づくりを目指しているそうだ。
そんな、こはらだ幼稚園を訪れた学生は一通り園内を見学した後に「この園はどうですか?」と問われ、『楽しそうです!』と答える。その回答にご満悦の阿部理事長。「それが自慢だからね!うちの園に入る?」とユーモアを込めて誘っているという。
こはらだ幼稚園の雰囲気を感じ、共感し、阿部理事長のユーモアにクスッと笑う先生が集まっている。そしてまた、“おもしろそう”で“楽しそう”な、こはらだ幼稚園らしい雰囲気を作っていくのである。
私だけでつくる園じゃない
「先生たちが楽しんでいない園では、子どもたちは楽しむことができない。“やらされている感”というのは、子どもたちにも伝わってしまうものだ」という阿部理事長。

園児と遊ぶ先生の姿
約10年前に理事長に就任してから、「先代の理事長が築いてきたこはらだ幼稚園を、自分の代で衰退させてはいけない」と様々な勉強会に参加し、より良い園を目指してきた。手本となるような幼稚園の視察にも行った。
しかし、「自分が良いと思ったものを先生に伝え、実践してもらうことに難しさを感じていた」(阿部理事長)
「自分だけじゃ無理だなって思ったんです」と、当時を振り返る阿部理事長。それから、1人で参加していた勉強会や視察に、園長をはじめとした先生たちを連れていくようにしたという。

落ち葉を追いかける園児と、見守る先生
園を一緒に作ってきた先生たちへのお願いはただ一つ。「好きなことをやっていいよ!でも、報告はしてね?」。もちろん、自分の“好きなこと”をするためには、“与えられた仕事”ができるようになってから。
基礎を固め、こはらだ幼稚園らしさを知った先生たちが発揮する“好きなこと”は、多くの園児に求められる、皆の“好きなこと”になっている。
あなたの“好きなこと”を、こはらだ幼稚園で教えてくれませんか?
“先生”になるために必要なもの
「こはらだ幼稚園が自分のものだとは思っていません」ときっぱり言い切る阿部理事長。

園児に大人気の阿部理事長
こはらだ幼稚園は地元住民が出資しあってできた幼稚園だ。初代理事長は小原田小学校の元校長先生。幼児教育の重要性に気づき、定年退職後の昭和40年に園を創設した。
阿部理事長はというと、大学卒業後は営業職に就職。10年ほど勤めていたが退職し、当時父親が理事長をしていたこはらだ幼稚園の“バスの運転手”となった。「スーパーに行ったらね、バスに乗せている園児がいて、私に気づくと、『あーーーーー!』って声をあげるんですよ。こっちもビックリしちゃって、あたふたしたものです」と懐かしみ、笑みを浮かべる。
いつものようにバスの運転をしていたある日。園の門から飛び出した子どもが、危うく事故にあいそうになる現場を目撃した。その様子を目の当たりにした阿部理事長はバスを降りることに決め、事故防止のために門の前にたち、子どもたちを見守る役を買って出た。

職員の集合写真
理事長となった今、「先生は偉いものではない」という阿部理事長。「勉強して、スキルがあったとしても、それだけでは先生にはなれない。子どもがいるから“先生”になることができるんだ」と、語気を強める。「もっと言うなら、先生たちがいないと、私は理事長にはなれない」と、先生たちへの感謝を言葉に込めた。
地域住民の力で創立したこはらだ幼稚園は、多くの人がバトンを繋ぎ続け、園児や先生が集まる居場所となっている。今、そのバトンを握っているのは阿部理事長…だけではない。先生たちの想いものせた、重みのあるバトンが繋がれる未来に思いをはせてみた。